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第3話:午後の光にて―ハイヤーセルフからのメッセージの受け取り方-Superbloom Story

更新日:2 日前


ソラエルは午後の光の中で、ゆっくりとハーブティーを口にした。

ミントの葉が一枚、カップの中でくるりと回る。


静かな空気の中で、どこからともなく――ふわりと光の粒が舞った。

「……来たね、サンシープ。」


「お邪魔いたします、部長。」

声と同時に、光のもやが羊の形を取り、ぽすんと床に降り立った。

毛並みは星屑のようにきらめき、ちょっとだけ寝ぐせがついている。


「今日も誰かを案内してきたの?」

「ええ、夢の中で少々。……ですが途中で、その方が急に目を覚ましてしまいまして。」

「それは残念だったね。」

「いえ、夢の途中で目覚めるのも、魂の自己防衛だそうです。 わたくしも昔、夢の中で羊を数えていたら、途中で寝落ちいたしました。」


ソラエルは思わず吹き出しそうになり、「サンシープが寝落ちしてどうするの?」と、カップを持ったまま肩を震わせた。


ハーブティーを飲むソラエル部長とサンシープ

その時、胸の奥に微かな光が走ったーーー

地上の「彼女」からの思念


“ちゃんと出来てるのかな。私の選んだ道、これでいいのかな。”


胸の奥の方に微かに鈍い靄(もや)が詰っている感覚が彼女から伝わってくる。

笑いの余韻のまま、ソラエルの表情が静かに変わった。


ハイヤーセルフとして見守る日々――

けれど彼女の不安を感じるたび、「見守るだけ」では済まされない気持ちが胸に広がる。


しかしハイヤーセルフは自ら手を貸しに行くことはできない。

人間からの願いを受けて初めて動けるのだ。


「……サンシープ。メッセージを伝えに行ってくる」

「承知いたしました、部長。では、私もついて行っても?」

「もちろん。サンシープがいると、世界が少し優しくなるよ。」


サンシープは嬉しそうに尻尾をふり、光の粒をぱらぱらとまき散らした。

ミントの香りが風に溶け、午後の光が少し深くなった。



カタカタとパソコンのキーボードを打つ彼女が見えた。


彼女の視線は画面にありながらも、

『今日のタスクはこれでいいのか』『本当にこの道で大丈夫なのか』―――

心はもやもやとした不安な思考で満たされていた。


ソラエルは『愛しているよ』とそっと胸の中へと言葉を吹き込んだが、彼女はグルグルと脳内を巡る思考のノイズに遮られ、受け取れない。


その時、彼女は小さく伸びをするとキッチンに水を取りに行った。

再度ソラエルが『愛しているよ』と声を掛ける。

それは数十回に及んだ。


「ん?…なんだぁまた愛かぁ。私は自分が好きだなぁ…」

彼女は、その声が『大変な状況にある自分を、無意識に自ら励ましているのだろう』と解釈した。自分の思考だと思っているようだ。


50回を超えただろうか、彼女の心が微かに反応したことをソラエルは感じ取った。


「しめた!」ソラエルは畳み掛ける。

『愛しているよ』 『愛しているよ』 『愛しているよ』―――

彼女はとうとう立ち止まり、『これは、私の思考じゃない』と確信した。


部屋をきょろきょろと見回し、そしてようやくノートとペンを取り出し、書き始めた。


『愛しているよ、とハイヤーセルフの声が聞こえる』

彼女がペンを走らせる速度に合わせて、ソラエルは一気に語りかける。


彼女のノートに刻まれた言葉―――


ハイヤーセルフ:『愛しているよ。思いっきり好きな人生を生きてみな。』

私:「ハイヤーセルフ、あなたは私にどうしてほしいの?魂は何を決めてきたの?」

ハイヤーセルフ:『自由に生きてみろよ、私がついている。やりたい事やらないでどうするんだ?』

ハイヤーセルフ:『私は間違えない。私には魂の記憶があるのだから。自分を信じて進んでほしい。』


そして、最も重要な言葉を、優しく、強く吹き込んだ。


私があなたに望むのは、楽しむことだけ。


『思いっきりやりたい事をやって生きてほしい。ただそれだけ。』


『大切に体験してほしい、笑う事、喜ぶこと、風が頬をなでる感覚、水の流れに手を浸した感覚…』


そして―――自分の中をもう一度みてほしい、私はあなた自身、あなたは私


『魂の声に従っている時あなたは楽しいと感じる。魂の決めた道にいる時の喜びを思い出す。鍵となることは―――楽しんで自分を喜ばせ…』




ハイヤーセルフ・ソラエルの肖像

その時インターホンが鳴った。「あ、宅配便ね」

彼女はペンを置いて玄関へとパタパタ向かって行った。


サンシープはソラエルを見上げた。

「メッセージは届いたのでしょうか?今夜、私が夢の中でご案内できるか、試してみますか?」


ソラエルは柔らかく微笑みながら首を振った。

「大丈夫、彼女はもう自分で進めるよ…さ、戻って午後のお茶の続きをしよう」


小さな箱を抱えて彼女が戻ってきた。そこに二つの光が淡く在った気がした。


青空に浮かぶひとひらの白い羽

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