第2話:赦しの記憶-ヒーリングセッションで受け取るギフト-Superbloom Story — Chronicles from the Light Library—
- happyenergy5103
- 7 日前
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更新日:2 日前
坂多昇(さかた のぼる)、三十五歳。商社勤務。
彼の夢の続き―――
昇は、サンシープと名乗る二足歩行の羊に促され、図書館を出た。
一瞬、自分が宇宙を漂っているような気がしたが、次の瞬間、目の前の建物の扉が開き、サンシープが中で待っていた。
「ここはSuperbloom広報部です。ささ、どうぞ」
中に入ると、大きなテーブルがあり、その奥に羽の生えた男が白いローブ姿で立っているのが見えた。昇は思わずぎょっとして、両目をこすった。
そこには、ゆったりとしたアイボリーのセーターを着た男が立っていた。
「どうぞおかけください」男は柔らかく微笑んだ。昇は言われるまま、テーブルの端の椅子に腰を下ろした。
サンシープがちょこちょこと歩いてきて、マグカップをコトッと置いた。
「紅茶です。砂糖とミルクはお好みでどうぞ」

男は軽く会釈しながら自己紹介した。
「私は広報部長のソラエルと申します」
昇が立ち上がって挨拶しようとすると、ソラエルは微笑んで手を上げた。
「どうぞそのままで。……坂多昇さんですね。図書館の千尋さんからお話は伺っています。」
「では、セッションを始めましょう。どのようなお悩みですか?」
昇は「はぁ……それが……」
と口を開くと、不思議なくらい、言葉が後から後から溢れ出てきた。
会社での立場、顧客と上司との板挟み、理不尽な要求、そして重い責任。
それらへの怒りを押し殺す毎日なのだ。
ソラエルは静かに目を閉じた。
「それは、どんな感覚ですか?」
その声は、先ほどよりさらに柔らかく、深く響いた。
「……胃の中が煮えるような痛みを感じます。」
「その痛みは以前、別のどこかでも感じたことがありますか? 一番最初に感じたのはいつでしょう。」
昇の心に、穏やかな空気が広がっていく。
ふーっと息を吐いたとき、記憶の底に映像がよみがえった。
―――子供のころ。君主のような父が、いつも昇に言っていた。
「長男なのだから、お前はしっかりやりなさい。」
その言葉からは逃げられず、言い訳も許されない。絶対的な命令だった。
ある日のこと。
小学3年生の昇は、父の書斎の片づけを手伝わされていた。
「本を図書館に寄付する」と言われ、箱詰めにしたり、本を運び出したり。
当時の昇には、それは重労働だった。
疲れて座り込むと「怠けるな」と叱られた。
父が書斎を出たあと、もうじき終わると思い、机に手をついて寄りかかった瞬間
――ガタッ。コップが倒れた。
下の箱に入っていた本が濡れていく。
昇の顔からみるみる血の気が引いた。
そこに父が戻ってきた。
「何をしているんだ、拭くものを持ってきなさい!」声を荒げる父。
昇は慌てて走り、ぞうきんを持って戻った。
「ぞうきんじゃない、タオルだ」と父は言い、自ら取りに行った。
「もういいから、あっちに行ってなさい」
昇は「ごめんなさい」と言って部屋を出た。
背後で「まったく……」と父のつぶやく声がした。
結局、その箱の本は寄付できず、処分された。
その記憶を語り終えると、ソラエルが静かに言った。
「そのようなことがあったのですね……その時、昇さんはどんな気持ちでしたか?」
「一生懸命手伝ったのに、結局自分が本を無駄にしてしまった。とても辛くて……理不尽だと感じました。父への憎しみもあります。」
「そうでしたか。それでは今、イメージの中でお父様を呼んでみてください。」
昇は、温かく包まれるような感覚の中で、父を思い浮かべた。
厳しい表情の父が現れる。
「では、今、お父様に言いたいことを伝えてください。」
昇は、当時の自分がどんな思いで手伝っていたか、子供には限界があったこと、そして怒りを感じていたことを率直に伝えた。
父は黙って聞いていた。
その瞬間、胸の奥にしまいこんでいた怒りと悲しみが、雪崩のように溶け出した。
愛されていないと思っていた幼い日々。
褒められるのは「一番」のときだけ。
それ以外は認められない。
――そんな記憶が、次々とあふれ出た。
すべてを聞き終えた父は、下を向き、小さくなっていた。
「……すまなかったね。」
その一言で、昇の目から涙がこぼれた。
止めようとしても止まらなかった。
父が昇を優秀に育てようとしたこと。
厳しくしたのも愛の形だったこと。
――なぜか、自然とわかった。
「もう、いいんだ。」昇がそう言うと、父は「ありがとう」と答え、静かに消えていった。
―――「どうでしたか?」ソラエルの声がした。
「……はい。だいぶスッキリしました。」
「そうですか。良かった。 昇さん、この経験を通して、何か人生の学びはありますか?」
「はい。私は“責任”を取り違えていました。 愛の形にはいろいろあること、そして“赦し”を学びました。」
「赦しや責任、愛を学ぶとき――もうこのやり方を続ける必要はありませんね。 手放したいですか?」
「はい、もちろんです。」
ソラエルは静かに頷いた。
昇の不要な思いが解放され、責任、そして赦しと愛を、思いやりを通して学べるように、潜在意識を書き換えた。
柔らかな光が昇を包み込む。
最後に、会社のことを思い浮かべてみるよう言われた。
頭の中に職場の光景が映る。
自分の“言いなりになる態度”が、事態を悪くしていたことに気づく。
そしてもう、そうではない自分を感じていた。
温かい空気が全身に広がり、セッションは静かに終わった。
「ありがとうございました。」昇が言うと、ソラエルは微笑んだ。
「どういたしまして。……ご縁があったのでしょう。」
サンシープが隣にちょこんと立って、柔らかく尻尾を振った。

この物語は「Superbloomの仲間たち」による魂の世界の物語です。
現実と夢のあわいの世界で、あなたの心のどこかに響くものがありますように。


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